サドンデス、通勤読書のススメ

雑記

日曜日。

新年度となっての4月はゆったり過ぎている。というか、まだどうなっていくのかわからない感覚がある。忙しくならないように、できる限りゆったりと世間と距離を保って生活してゆきたい。

最近は、平日帰宅後は競馬予想をして、職場の休憩時間にドラマを観て、通勤電車で本を読んで……という過ごし方が定着している。ドラマはまだ前クールの録画を追っている。やっと『リブート』を観終わった。とにかく時間が足りないと思うのだけれど、一方でじぶんの世話だけすればいいわたしが何言ってるんだ? とも思う。

仕事をやめられたら……折に触れてそう思うのだけれど、雇われ会社員という立場はそこそこ美味しくはある。20代から投資をがんばっておけばFIREという選択肢もあったと思うとそこは後悔しかないけれど、こうなったら勤め人側の甘い汁は吸っておかなければ(言うほど甘くはない事実はさておき)。会社は事あるごとに「責任感」とかいう圧力を無神経に押しつけてくるけれど、そんなものあってたまるかと思う。

「じぶんかわいさ」を悪だと思わないこと。これができるようになると、不思議と周囲にやさしさを分ける余裕が出てくるものだ。

そんな気持ちで予約していた『天狗の台所』7巻が届き、幸せの頂点のような気持ちでビニールの封をとく。帯に「ドラマシーズン3の制作決定」とある。キャストもそのまま。え、うそうそ!? 主要キャストの3人はそれぞれが大きく名を上げて、しかもオン役の越山敬達くんはもうけっこう大きいのでは? ともあれ、これはうれしすぎるニュース。

通勤電車は概ね30分乗車するので、往復1時間の読書時間がある。基本、座れることは滅多にない。立ちながら読むことになる。よってつまらない作品だと途端に苦行になる。でも、しみじみいい言葉が散りばめられたほっこりエッセイや詩集、エキセントリックな純文学では眠くなるか、気分が悪くなってしまう。

満員電車の修行はミステリーで埋めるべし。これがやはり正解なのだ。ひとによっては凄惨な描写が苦しいこともあるかもしれないが、だからこそ家でしっとり読むべきではないとも言えるわけで、それが正解かどうかはわからないが個人的にはあまり集中し切らない環境がちょうどフィットすると感じる。

今週の通勤の友は相場英雄。未読だった2冊を続けて読み、じぶんの手のひらをそっと見るような気持ちになる。

ともあれ、そんなふうにして生活しているとあっという間に毎日は過ぎる。それがいいことなのか、よくないことなのか。

よくわからないけど、すごく平和だと思う。

友だちも恋人もいないし、週末の約束もないし、お金もないけれど、望ましい毎日はけっこうあるのだ。

きょうの本

相場 英雄:『サドンデス』

あらすじ:極貧生活を送っていた女子大生の理子だが、スカウトされてラウンジで働き、新規店を任された。一変した生活をSNSに上げると飛躍を妬む者も出てくる。百貨店をクビになった中年の小島もそうだ。その嫉妬心が殺意に変貌するのに警視庁サイバー犯罪対策課の長峰は気づくが……。(幻冬者Plusより) 

べつのミステリーを読んで、「もっと相場英雄みたいにさぁ」という感想を持ったそばから「そういえば最近、相場英雄読んでないな……」と思うに至り、最近の著作を調べる。おっ、読んでないのあるじゃん! やった! と思い、すぐに手を出す。

最近、ミステリーの背景や連続ドラマの設定でこういうの増えたよな、と思う。いわゆる格差社会、闇バイト。主人公の理子もごく普通の女子高生だったところから、ちょっとしたきっかけであっという間に貧困に転落する。

以前、『東京貧困女子』(ドラマにもなっている)というルポを読んで、これまったく他人事じゃないよなと思ったことがある。ギリギリの生活というのは、ほんの少し何かが狂っただけで(ほんとにほんとにほんの少しでも)、すぐに崩壊する。

この作品はそこの背景(=現代の社会問題)を大枠にして彼らしい悪辣なエンタメに落とし込んでいる。装置も見事だし、最後の黒幕が判明する場面では驚きで頭が真っ白になるほど。

ちなみに「サドンデス」は直訳で「突然死」という意味。以前はサッカーの延長戦で「どちらかが1点入れたら試合終了=野球のサヨナラ勝ちと同じ条件」の方式のことを「サドンデス方式」と言っていた時代があるけれど、何だかどこかから難癖がついてこの言葉自体も消えてしまった。

このあたりの「言い様だけを変える」方式も増えた気がする。久しぶりに「サドンデス」という単語を見て、これをタイトルに持ってきたのもすごく相場英雄っぽい気がした。

ともあれ、じっくり集中してページをめくることに没頭できる作品です。ぜひに。

相場 英雄:『楽園の瑕』

あらすじ:北海道警から山梨県警に異動した樫山順子は、大規模農場開発に怪しい動きを嗅ぎつけた。地元政治家らの間で暗躍するのは、かつて規制緩和の名のもと経済を壊した男。中国の強欲投資家も加わった資本主義の魔手から、樫山は山岳の楽園を守れるか。(Amazonイントロダクションより)

相場英雄の作品で主力の登場人物となっている若き警察キャリア・樫山順子。ついに刑事部長か、などと親戚のおっさんみたいな気持ちになってしまうほど、彼女は相場英雄ファンにはおなじみ。

続編、というほどではないけれど、前述の『サドンデス』の話もちらっと出てくる。重要な接点があるわけではないので、読む時系列はどちらでもよい。

「規制緩和の名のもとに経済を壊した男」これが実在の人物が常にチラつく仕様で、問題なく出版できるの逆にその実在の人物は懐が深いのかな、というかべつに余裕なんだろうな、などということを考えた。

『サドンデス』に比べると、やや難解な真相が描かれるため経済小説読み慣れていないとスカッとできない可能性があるものの、その線が大好物な読者にはドストライクな小説のはず。

充実の読書時間に行ってらっしゃいませ、と胸を張って言える傑作です。

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