3月は3本。2025年の累計は16本。
14.ドライブマイカー
『ドライブマイカー』は、3時間弱の大長編で2週にわけて鑑賞。
鑑賞後の体感は悪くなかったんだけど、その後もう一度原作を読み直してみると意外と違和感が浮上してきた。あの短編に広島とか韓国とかを詰め込まれて、春樹は大丈夫だったんだろうか。
(大丈夫だったからその後の映画の評判に繋がったのだろう)
それに、映画での加福とみさきの親密さも気になった。
映画での三浦透子の佇まいは原作どおりで素晴らしかったけれど、要所要所でウェットに寄せてくる演出があった。小説はもっとドライでサバサバしている。そこが読み口としての信頼感というか拠りどころではあったところもあったような気がする。
というところで、通算して映画の感想としては「悪くはなかった」。そんな感じ。
原作を踏まえずただ映画を観ていたら、もっと好きになっていたかもしれないし、むしろ嫌いになっていたかもしれない。確かめることはできないけれど。
15.市子
『市子』も日本映画。
きょねんの春に放送していた『アンメット』というドラマがすごく好きで、それに出演していた杉咲花と若葉竜也が出ている映画だということで鑑賞。
主演の杉咲花が演じるのはいわゆる無戸籍児の壮絶な人生。以前、『相棒』にも同じテーマが描かれた回があった(加藤清史郎が無戸籍児の役で圧倒的な演技だった。のちのシリーズで就籍し、警察官になったその後が描かれた)。この『市子』についてもかなりヘビーで、観るにはかなりエネルギーが必要な作品。
原作は人気のある舞台作品らしくって、こちらもびっくり。
市子は他愛のないごく単純な分岐で他人の懐に入り込んでいくテクニックがすごかった。それも、人生のどうしようもない分岐で身につけたものなんだろうなと思うと、壮絶な経験もすべてがマイナスではない気がしてくる。
経験しないに越したことはないような経験(たとえば、いじめであったりとか)であっても、それなりに「学び」みたいなものは得られたりする。
経験しないに越したことはないけれど。
16.関心領域
『関心領域』はアメリカ・イギリス・ポーランド合作のホロスコート映画。アカデミー賞の外国語作品賞を獲っている。ちなみにこの年の日本代表作品が以前触れたヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』。
相手が悪かったかもしれない。
ユダヤ人の強制収容所の隣で豪邸に暮らす一家が描かれている。奥さんはお洒落をしたり、インテリアをあれこれ拡張したりとそういったことにばかりに執心しているわけだけれど、そのすぐ隣では多くのユダヤ人が惨殺されている。
それを引いた視点から風刺的に描いた映画。
予告からして「これからこういったものを見せるので、こういう心構えで見なさいよ」という映画なので(戦争や歴史を扱った映画は得てしてそう。それはそう。そういう意味ではホロスコートもまだシンプルなエンターテイメントにはなり得ない近代史だということだ)、映画鑑賞としての自由度は低いけれど、最悪な世界史のある視点としては貴重な作品かもしれないと思う。
3月は2週にわけて1本を観たりしていたので、3本しか観られなかった。
4月は待ちに待った名探偵コナンの劇場シリーズが公開されたり、5月にはフランソワ・オゾンの新作がかかったりとまた映画館に行きたくなる機会がちらほら。
楽しみな春になりそうです。